誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「どうして私と・・・なんですか」


 関係を持つたびに、いつもこの質問を繰り返しているような気がする。


 「いつも言ってるよね。理恵が好きだからとしか答えようがない」


 ただの遊びじゃないと確認したくて。


 自分が必要とされていると確かめたくて。


 許されない関係とはいえ、そこには紛れもない愛が存在していると、信じていたかった。


 「そんなに僕が、信じられないのかな・・・」


 試すように耳元で囁かれ、感度が上昇する。


 「もっと感じさせてあげようか」


 「え・・・、結構です」


 私は背を向けたまま、更なる誘惑の魔の手から逃れようとしたところ、背後で笑われているのに気づいた。


 「何がおかしいんですか」


 「素直に味わっていればいいのに」


 「私・・・」


 「おとなしくしていなさい」


 再び背後から強く捕まえられた。


 触れられてしまえば、善悪も何もかもどうでもよくなってしまう。


 「・・・いつもこうなの?」


 「え?」


 「彼氏としている時も、こんなふうに感じているの?」


 考えないようにしていた佑典のことを、嫌でも思い浮かべてしまう。
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