誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「そういえば父さん、晩ご飯はどうしたの」


 佑典は和仁さんが全く家事をしないのを知っている。


 「ん・・・。さっき美味しいものを食べたような気がするけれど」


 「お菓子だろどうせ。何か作る?」


 「いや。もう遅いからいいよ」


 「そう。・・・あっ、父さん! 洗濯物干しっぱなしだよ」


 「忘れてた」


 「日が沈む前に取り込んでおいてって言ったのに・・・」


 タオル数枚が、物干し竿にかけられたままになっていた。


 佑典は居間から庭へと出て、洗濯物を取り込もうとする。


 「あ、佑典」


 まずい。


 居間から庭へと出る際に利用する、石の踏み台の上には私の靴が。


 佑典に見られると、いいわけも苦しくなる。


 「何?」


 佑典が大きな窓を開こうとした時、和仁さんは慌てて呼び止めた。


 「・・・台所に変な虫がいるんだ。すぐに捕まえてくれないか」


 「仕方ないな。もう・・・」


 佑典は急いで台所へと行き先を変えた。


 その隙に和仁さんは庭に出て、まず私の靴を隠し、それから洗濯物を取り込んでいるふりをした。
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