誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「じゃ、俺バスルームに戻るから。ファックス読んでおいてよ」


 「はいはい」


 佑典は電球を片手に、バスルームへと引きかえしていった。


 「・・・」


 電球を交換し終え、ようやくシャワーを再開した模様。


 「理恵」


 「和仁さん・・・」


 安堵のあまり、泣き出しそうになった。


 だけど泣いている暇はない。


 「さ、急ごう。外に出てガレージまで走って」


 言われるがままに廊下を駆け抜け玄関から飛び出して、ガレージへと急いだ。


 「乗って」


 和仁さんがロックを解除するのと同時に、助手席へと滑り込んだ。


 車は勢いよくガレージを飛び出し、夜の住宅街を駆け抜ける。


 かなり離れた場所に到達するまで、私は佑典に追いかけられているような気がして、怖くてたまらなかった。


 それは罪の意識が生み出す幻影・・・?


 「危ないところだったね」


 しばらくの間車内で無言だった私たちが、ようやく口を開いたのは。


 国道に到達し、順調に運転が続けられるようになった頃のことだった。
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