誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「お邪魔します」


 佑典の自宅のドアを開けた時、すでに辺りは薄暗くなっていた。


 しかし街灯に照らされた佑典の家は、想像以上に立派で。


 古びた寮住まいの私は、いささか気後れを感じてしまったものだ。


 「佑典の家、すごい家だね・・・」


 「俺の家じゃないよ。あくまで父親が稼いだお金で買った家だ。俺は単なる居候。大学を出るまでは」


 「・・・」


 父親の話をする時、佑典の口調がいつもそっけないことに私は気づいていた。


 金持ちな父親に対し、何かしらコンプレックスみたいなものがあるのだろうか。


 「・・・佑典のお父さんって、自営業だよね?」


 佑典がキッチンの冷蔵庫から飲み物を取り出している際、ソファーに座っている私は何となく尋ねてみた。


 「お店とか経営しているの? それとも会社?」


 「・・・そういうのとはちょっと違うんだ」


 「違う?」


 「もっと・・・。そう、自由業と言うべきか」


 「・・・」


 佑典は結局、曖昧な受け答えに終始していた。
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