誘惑~初めての男は彼氏の父~
 新歓コンパではアルコール類を口にするので、今日は車ではなく公共交通で移動。


 帰りが大変なので、こういう日は佑典は大学の近くで一泊することが多い。


 友人宅に停めてもらう場合もあるし、こうして私と過ごすためにホテルに泊まることも。


 今日は私が同伴だったので、佑典もコンパは二次会で退散して、その後二人きり。


 「今は父親が東京へ出張中だから、うちに来てもらってもよかったんだけど。移動が大変だしね」


 和仁さんは最近忙しい。


 例のヌード写真集がヒットしたからだ。 


 発売前は宣伝や広報活動、発売後は売れ行き絶好調とのことで取材依頼が相次ぎ、マスメディアで頻繁に取り上げられている。


 取材の関係で、東京まで出向くことももう何度目だろう。


 最近、なかなか会えなくて・・・。


 「自分の父親のこととはいえ、こんなに売れると怖いんだよね。別世界の住人のように感じられて」


 そっと優しく抱き寄せながら、佑典はそう告げた。


 私も・・・。


 これ以上和仁さんが遠い存在になってしまうのは、怖い。


 せっかく写真集は成功したというのに、素直に喜んでばかりはいられない私がいる。


 そして・・・あの子の存在。


 私を目の前にしても遠慮なしに、佑典への好意をアピールしているあの内村さんって子の登場も、私を不安にさせていた。


 全てがこれまでのようには、いかなくなるような気がして。


 ・・・いずれにしても佑典はもう四年生、卒業学年。


 卒業までに白黒はっきりさせなければならない。
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