誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「最近あいつも忙しくて、なかなか理恵を構ってあげられないみたいだけど」


 「・・・」


 日付が変わる頃、テレビをつけてあれこれ会話をした。


 佑典は四年生となり、六月の定期公演と七月の教員採用試験のための勉強とでかなり多忙。


 オーケストラの定期公演は半期に一度開催される一大イベントだけど、今回は学生生活の区切りとなる年次のものなので佑典はかなり集中している。


 そして教員採用試験。


 人生を左右する第一関門だ。


 昨今の就職難を反映してか、受験者が殺到するゆえに合格率はかなり低い。


 かなり対策を練らなければならないし、まずは今月母校へ出向いての教育実習もあり・・・ますます多忙。


 「僕もそれなりに忙しいんだけど、理恵の胸の中で眠れるのならばスケジュールなんて」


 慌しい日々の合間を縫って、こうして抱き合えたことへの喜びを噛みしめるかのように、改めて強く私を抱きしめた。


 「そういえば、ブログ快調だね」


 以前より増えた一人で過ごす時間の穴埋めをするかのように、私はブログを運営する楽しみを覚えていた。
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