誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「前途有望な弟子ができて、嬉しいよ」


 背後からもたれかかるように私に抱きついてきて、そのまま首筋に唇を這わせる。


 「私は・・・弟子ですか」


 私の胸元に下りてくるその手にそっと触れながら尋ねかけた。


 「ただの弟子にしておくのは、惜しいかも」


 さらに強く抱きしめられた。


 「僕の力で、リエをいずれ第一線にまで引き上げたい」


 「そこまでは・・・」


 「無理だと思う?」


 「・・・」


 「あくまで僕の場合だけど。別に英才教育を受けたりだとか、卓越した才能を有していたわけじゃない。機会に恵まれたのと、素敵な被写体に出会えたからだ」


 私の耳元で告げる。


 「だから理恵にも、僕と同じステージに登りつめてほしいんだ」


 「私がですか」


 「そうすれば今以上に世界を共有できるし、どこまでも一緒に行ける」


 「和仁さん・・・」


 今のままでは行き止まりの二人の世界に、抜け道を見つけ出す一つの道しるべを見い出したような気がした。
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