誘惑~初めての男は彼氏の父~

誓い

***


 鳴り止まぬ拍手。


 喝采の渦。


 夏至に近いこの日は、佑典所属のオーケストラの定期演奏会だった。


 年に二度の定期演奏会は、かなり本格的なイベント。


 チケットは有料で、市内のコンサートホールにて開催される。


 演奏が無事に終わったのを確認すると、満員の観衆から一斉に拍手が響き渡った。


 佑典はファゴットの首席奏者として、かなり目立つポジションにいる。


 そして・・・。


 「あの子、新入生だよね」


 一年生の内村明日香さんが、フルートの即戦力としてすでにステージに立っている。


 現時点でこのレベルなら、首席奏者の地位を確保するのも時間の問題だろう・・・と佑典も話していた。


 「寺本さん。あの子よ」


 一曲目の演奏が終わり、休憩時間となった。


 その合間に隣の席の子が話しかけてきた。


 ここ一帯は部員の交際相手たちが、まとまって座っているゾーン。


 比較的仲のいい子たちが、お節介にも私に報告してくる。


 「あの内村って子、中田さんにかなりしつこく言い寄ってる」と。


 彼女は即戦力ゆえ佑典も、部の今後を考えるとあまり邪険には扱えないでいる・・・とも。
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