誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「もう少し待とうかとも思っていたんだけど」


 「・・・」


 「いい?」


 「あ・・・」


 ソファーに体を倒される瞬間、私の視界に意外なものが写し出された。


 「佑典、あの・・・」


 「だめ。もう逃がさないよ」


 佑典は私がためらって、逃れようとしていると勘違いしている。


 逃さないとばかりに、さらに強く抱きしめてくる。


 「違うの、あのパネル」


 「パネル?」


 「ほら、隣の部屋の」


 「・・・」


 体が傾く際、隣の洋間の壁に架けられた大きなパネルが目に入った。


 それは見覚えのある・・・水無月和仁の作品だったから。


 「あれは、特別に作られたものだ」


 「写真家の水無月和仁の作品ね。佑典もファンなの?」


 「俺は全然・・・!」


 佑典は不機嫌そうに吐き捨てた。


 「じゃあ、佑典のお父さんが好きだとか?」


 「まあそんなところ」


 「私も水無月和仁作品、結構気に入って、」


 「もういい」


 佑典は強引に唇を重ね、私の会話を遮った。
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