誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「いや、迷惑とかじゃなくて。・・・私にはまだ、卒業後の進路とか考えられなくて」


 「就職希望の子は、もうすでに就職活動始めているよね」


 「・・・」


 「理恵もそれと同じような感じで、将来の選択肢の中に俺とのことを考えてほしいんだ」


 「とりあえずはまず無事に卒業して、社会人になって、その先のことはそれからゆっくりと・・・」


 私はずるい計算をしている。


 和仁さんとの関係を断ち切れなくて、猶予期間を少しでも引き延ばそうと画策している


 すると・・・。


 「理恵は就職活動、しなくていいから」


 「えっ何言ってるの。私佑典とは違って、教職課程取っていないのに」


 「いいから。俺と一緒にいれば」


 「佑・・・」


 「卒業したら、すぐに結婚しよう」


 すでに夜も更けてきて、人通りの少ない大学構内。


 とはいえ近所の住人が近道に用いたり、大学校舎内で飲み会を終えた帰りの学生たちも時折通りかかっている。


 そんな中佑典は、そっと私を抱きしめた。


 これまでにも幾度となく、結婚の話は言及されていた。


 卒業後、少し社会を経験してからって最初は言っていたのに。


 佑典は時期を早めてきた。


 「どうして? 前は卒業後しばらくしてからって話だったのに」


 「待っていられないんだ。ゆっくりしていたら・・・理恵がどこかに行ってしまいそうな気がして怖いんだ」
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