誘惑~初めての男は彼氏の父~
 その時ふと、あの人の影が過ぎった。


 三年前、初めて体を許したあの人の。


 付き合っている彼氏と初めて・・・というときになぜ、あんな行きずりの人のことを思い出してしまったのだろう。


 「あ、痛い・・・」


 今度は強引にソファーに押し倒され、髪が引っかかり痛かった。


 「あんな写真、もうどうでもいい」


 「・・・」


 「俺は、理恵だけを見つめていたい」


 私が身動きを止めて目を閉じると、一瞬沈黙が走った。


 やがて首筋のボタンに指が触れ、外される。


 素肌が露わになるにつれて、緊張が高まる。


 鼓動が速くなる。


 初めてじゃないのに。


 「そんなに緊張しなくてもいいよ。・・・優しくするから」


 「!」


 佑典は私が、これが初めてだと思い込んでいる。


 互いに互いが、初めての相手だと信じている。


 私は・・・とうの昔に知り尽くしているのに。


 それを打ち明けるわけにもいかず、過去は封印したまま静かに身を任せる決意をした。


 ボタンが一つ一つ外され、素肌に冷ややかな空気が触れる。


 私も佑典に応えようと、腕を伸ばしたその時・・・。
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