誘惑～初めての男は彼氏の父～
　･･･。


　｢･･･何かあったの？｣


　部室のある棟から出て、学内を南北に貫く通りを二人歩いた。


　先ほどの他の部員達の私に対する態度が、いつもと少し違っていたのが気になった。


　｢別に。俺が試験目前なのに部室に顔を出したから、周りが変に気を遣っているみたいで｣


　｢･･･｣


　本当にそれだけかどうか、分からなかった。


　加えてさっきの、内村さんの態度。


　以前にまして刺々しい。


　｢さ、部内のことはもういいから。今晩は何を食べようか｣


　今日はこれからちょっと買い物をして、それから食事をして帰ろうって話になっている。


　教員採用試験も一次試験が終わり、ようやくゆっくりできる日々が始まった。


　まだ二次試験が残っているので、心から解き放たれた気分にはなれないけれど･･･。


　佑典の車が停めてある駐車場まで歩いて、そこから車に乗って出かけた。


　買い物の後の食事をして、その内に先ほどの部員たちの挙動不審な態度のこともすっかり忘れていた。


　佑典もそれから全くその話題に触れなかったので、あまり重要なことではなかったのかもしれないって気分になっていた。
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