誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・そういえば理恵、最近美術館行ったよね」


 「うん・・・。ブログ見てくれたのかな?」


 「もう毎日の習慣になってるから。最初はびっくりしたけど、今は理恵がブログを始めてよかったと思ってる。会えない日でも会ってるような気分になれる」


 ちょっと前まで、佑典は試験勉強に集中するために、会う回数が減っていた。


 試験終了前に終わってしまう、開催期間が短い美術館の展示を鑑賞しに、私は出かけた。


 「ところでその日、うちの父親に遭遇しなかった?」


 「え・・・」


 私は衝撃を受けた。


 その展示にはまさに、和仁さんに誘われて一緒に出かけたのだったから。


 「どうして私がか・・・、お父さんと?」


 佑典がどういう意図を持って尋ねてきたか分からないので、とりあえずは平静を装った。


 どうして突然、和仁さんのことを。


 ブログには和仁さんのことなど、一言も書いていない。


 もしかしてブログに掲載した美術館の全景フォトなどに、和仁さんの痕跡が映し出されていたのか?


 それとも・・・誰かに見られたのだろうか。


 佑典にバレたのだろうか。


 私は緊張しながら、佑典の反応を待った。
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