誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「どうして私がそんな・・・!」


 一言吐き捨てて、窓から外を眺めた。


 動揺と怒りとで、景色は目に入っていない。


 「理恵さんごめんなさい。伝えたくはなかったのですが、このまま知らせずにいるほうが後から悔やみそうで」


 後輩の子は申し訳なさそうな表情で、私を見ている。


 「違うの。伝えてくれてありがとう。これからも知らずにいたらと考えただけで、ぞっとする」


 慌てて私はお礼の言葉を伝えた。


 それにしても不愉快だった。


 内輪だけで覗けるように設定が施してあるとはいえ、ネット上で人のことをあれこれ、面白おかしく噂し合うなんて。


 しかも事実ではないことを、まるで真実であるかのように脚色して。


 「・・・」


 胸の中で怒りを燃やしていた私は、はっと我に返った。


 私にそんなことを言う資格があるのか、って。


 確かに噂されている内容は、かなりの部分が事実と異なっている。


 援助交際だなんて・・・。


 だけどそれも、いけないことだって知っていながら、これまで和仁さんとの関係をズルズル続けてきた結果。


 佑典に嘘をついて・・・。


 (佑典・・・)


 佑典の耳にこの噂は、届いているのだろうか。
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