誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「理恵がベンツに乗ってたって言う奴がいたんだけど、ベンツといえばうちの父親だよね。もしかすると、」


 「・・・」


 「何回かあったよね。うちの父親の車で、理恵を送ったこと」


 「うん・・・」


 佑典も同乗して、和仁さんの車で送ってもらったことは数回ある。


 まずは初めて佑典の家に行った時。


 和仁さんが佑典の父親だったと知って、急いで帰ろうとしたものの、佑典はビールを飲んでいたので運転不可能。


 それゆえ和仁さんに、自宅付近まで送ってもらった。


 他にも・・・佑典と飲んだ帰り道、たまたま通りかかった和仁さんに送り届けてもらったことも。


 偶然だと本人は主張していたけれど、あれは絶対に計画的に私たちを待ち伏せていたんだと思う。


 佑典は全く疑っていなかったけど。


 ・・・これくらいだ。


 他は佑典の知らない、私と和仁さん二人きりでの密会の時。


 ベンツでどこかへと向かう私たちを、誰かが見ていた可能性が高い。


 佑典とは違う、年上の男性の助手席に座る私。


 誰も佑典の父親=和仁さんの顔を知らないのだから、私が浮気している、援助交際をしていると噂がだんだん拡大していったのだと考えられる。


 外車に乗った、リッチっぽい年上の男性。


 それが援交だと、誰かが勝手に決め付けた・・・。
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