誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「やめて・・・」


 むなしい抵抗。


 「本当にそう思ってる?」


 「・・・」


 「これ以上続けたらヤバいとは分かってるんだけど・・・。会ってしまえば離れられなくなるね」


 それは私も同じ。


 今度こそけりを付けようと決意してはその都度・・・流されていく。


 秋物のオリーブ色の服の隙間から、和仁さんの手が入り込んでくる。


 「ただ体目当てで遊んでるだけだったら、互いの不実さが責められて当然だけど」


 背後から伸ばされた腕は私の胸に到達し、耳元での囁きがさらに私を痺れさせる。


 「理恵は・・・それだけ?」


 「え?」


 「束の間の遊びで、終わらせてもいい?」


 「遊び・・・」


 私は言葉に詰まった。


 若い頃の遊びとして、このまま終わらせて。


 何事もなかったかのように、全て忘れて佑典と・・・?


 「無理・・・!」


 許されないとは分かっているのに、今日も私は断ち切れずに和仁さんと。


 自分からさらなる炎を求めて、抱きついた。


 「後悔した、なんて言わない?」


 「はい・・・」


 今日もだめだった。


 会ってしまえば、抱きしめてほしいと願ってしまう。


 和仁さんの腕の中は、心地よかった。
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