誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 抱かれた後、ホテルの部屋の天井をぼんやりと眺めていた。


 遮光カーテンに隔てられ、時間の経過が分からなくなる。


 そろそろ夕方だろうか。


 ・・・今日は佑典が卒業論文の説明会で、大学に夜まで缶詰め。


 その隙に和仁さんに会うことになった。


 夏のあの一件以来、少しずつ会う回数は減りつつあった私たち。


 このまま終わらせるのが最善の方法かも・・・と思い始めると、また会いたくなり。


 会ってしまえば、抱き合い一つであることを確かめずにはいられない。


 「和仁さん・・・」


 隣に眠る和仁さんにそっと身を寄せた。


 「ん・・・。まだ帰るには早いような」


 和仁さんは枕元のデジタル時計で、時刻を確かめた。


 まだ17時前後。


 もうちょっと一緒にいられる。


 「・・・まだ足りない?」


 「いえ・・・」


 どんなに抱かれても、まだまだ抱かれていたいのが本音。


 「寒いから、こうしていたいだけです」


 そろそろ季節は冬になる。


 肌に触れる部屋の空気も、ひんやりとしたものを感じる。


 「理恵は寒がりさんだから」


 和仁さんは私の要求に従い、そっと抱きしめ続けてくれていた。


 このまま時が、止まればいいのに。


 いや・・・


 この時が永遠に続いてほしいと願った。
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