誘惑~初めての男は彼氏の父~

東南アジア

 「え、日本校・・・?」


 「来年の四月から、そこで採用されることが正式決定した」


 「・・・」


 佑典の突然の報告に、私は絶句してしまった。


 教員採用試験に下位ながらも合格して、あとは採用通知を待つだけだった佑典。


 試験は北海道および札幌市が管轄のものだったので、赴任先は道内一円のどこかかと思っていた。


 (北海道内とはいえ広範囲なので、なるべく札幌近郊で採用されることを望んでいたみたいだった)


 なのに佑典が今告げた、卒業後の赴任先は・・・。


 「東南アジアの・・・」


 某有名私立大学の付属高校。


 ・・・その付属高校の日本人学校。


 つまり勤務先は、東南アジアの某国。


 「どうして・・・。あとは採用通知待ちだったのに・・・」


 「このまま待っても、結局採用されない可能性だってあるんだ。それならば確実な進路を早く確保したかった」


 「だからって、何も外国の」


 「先輩が紹介してくれて、面接だけで合格できた」


 「・・・」


 公立学校とは異なり、私立は「独自の採用方法」で教員を採用するケースも多いので。


 確固たる紹介者の存在した佑典は、すんなり採用が決まったようだ。


 しかし赴任先は、東南アジアの日本人学校。


 私の知らない間に採用試験を受け、合格も決まっていての事後報告だった。
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