誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「和仁さん」


 先ほどからそっと抱きしめられていたけれど、ここにきて私から強く抱き返した。


 「・・・どうしたの」


 突然の私の行動に、和仁さんも驚いている。


 「私を離さないでください」


 「理恵がどうしても別れたいって言わない限りは、できれば離したくはないけれど」


 余裕の表情でそう答えた。


 「それならば」


 その言葉を確かめながら、キスをせがむ。


 私のリクエストに応えるかのように、和仁さんは私に唇を重ねてきた。


 その先は・・・。


 「後悔しない?」


 「はい」


 「後悔は、させたくはないけれど」


 「・・・」


 抱かれながら、甘い夢の中に共に落ちていける。


 危険を察知してしばらく会うのを控えて離れていたのが、無意味に思えてきた。


 「まだ・・・」


 私の体がこんなに敏感だったなんて知らずにいた。


 指の先まで伝わる愛に溺れながら、身を委ねているうちに夜は更けていった。
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