誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ま、まさか佑典さんのお父さんが、こんな有名な方だとは。奥の部屋のパネルを見て、驚いてしまいました」


 「それほどでもないですよ。ただの道楽が長じただけで」


 とっさに話題を変えた私に、和仁さんも自然に付き合ってくれた。


 「・・・というわけで父さん、まさか帰ってくると思わなかったから、夕食の準備してないんだけど」


 佑典が会話を遮った。


 「そう予測して、駅弁持ち帰ってきたよ」


 和仁さんは右手で抱えた、駅弁の入った袋をちらっと佑典に見せた。


 「・・・だったらダイニングで一人で食べててね。俺は理恵と部屋に」


 佑典がそう言いかけた時だった。


 ピンポーン。


 玄関のチャイムが来客を告げた。


 「誰だよ。こんな夜遅く」


 とはいえ時刻はまだ午後八時くらい。


 佑典はインターホンを取って、来客に応対した。


 「宅急便だって。こんな時間にかよ。・・・受領ハンコは俺の自筆サインでいいよね」


 ブツブツつぶやきながら佑典は、荷物を受け取りに玄関へと向かった。
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