誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 食事を終えてから、指輪を購入に専門店に出向き。


 帰りは二人、大通公園を歩いた。


 冬の街を彩るホワイトイルミネーションが、輝きを放っている。


 「理恵、これからさ」


 「ん?」


 手を繋いで、二人でイルミネーションの輝く公園を歩く。


 時折薬指のリングの冷たさが、現実を認識させる。


 「・・・卒業後はしばらく離れ離れになるけど、いつまでも変わらないでいようね」


 今の私には、最も試される問いかけ。


 「本当に・・・変わらずにいられる?」


 「俺は自信がある。理恵は?」


 見つめられると胸が苦しい。


 「分からない・・・」


 そう答えて背を向けてしまった。


 「ま、それも仕方ないよね」


 いい加減キレられるかと思ったけど、佑典は私の曖昧ささえも受け止める。


 「離れてしまえばどうなるか、俺だって不安といえば不安だよ」


 周囲にも進学や就職などで、やむなく遠距離恋愛を選択したカップルは少なくない。


 困難を乗り越え、成就させたケースもあるけれど。


 体が離れてしまえばいずれ、心も離れてしまい・・・というケースも散見された。


 私もそんな予感がする。


 このまま離れてしまえば私は・・・。
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