誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「いつも悪いな」


 食べ物がいっぱい並べられたテーブルの前に二人並んで、語り出した。


 「悪いって、何が?」


 一応聞き返す。


 「内村のことだけど、ほんと悪い奴じゃないから」


 「・・・」


 庇うのもいつもと同じ。


 「真面目すぎるというか、たかが部活動とはいえ、かなり真剣に打ち込んでいて」


 「真面目なのは分かるけど、言い方がちょっときつすぎると思う」


 本当はもっと言ってやりたいんだけど、悪口になってしまうと佑典があまりいい顔をしない。


 それを分かっているので私は、かなりオブラートに包んだ言い方をするだけ・・・。


 「部のためを思ってのことなんだ。理恵と内村が接点があるのも、俺が卒業するまでだから、それまでなんとか我慢して・・・」


 残念ながら、そうするしかない。


 私も言い返してやりたいところだけど、下手に刺激して半年ほど前の援助交際騒動を蒸し返したくないし。


 佑典が卒業してしまえば、この部活に顔を出すこともほとんどなくなる。


 反撃して余計なトラブルを招き寄せるより、接触がなくなるのを待つのが賢明だとこの時は考えていた。


 「理恵、この後だけど」


 ・・・一次会が終わったら、打ち上げ会場を後にする予定。
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