誘惑~初めての男は彼氏の父~
 まずい。


 和仁さんと二人きりになるわけにはいかない。


 私も何気なく、佑典の後を追おうとしたところ、


 「あ!」


 ドアノブに手を伸ばす直前に、強引に和仁さんに抱きしめられた。


 腕の力は強く、私を離さない。


 「何をするんですか」


 「三年ぶり、になるのかな」


 「・・・」


 あの頃と何も変わらない、艶のある声を私の耳元に囁きかける。


 先ほどの紳士的な応対とは180度異なる、悪魔のような囁き。


 「まさかうちの息子に手を出していたとは」


 「私・・・!」


 誤解だけは避けたくて、弁明を試みたのだけど、


 「親の留守中に男の家に上がり込んで・・・。油断ならない娘だな」


 「違います!」


 「僕にしたのと同じ手法で、息子をたぶらかしたのか」


 まるで懲罰を与えるかのように、私を強く捕える右手がそのまま左胸を鷲掴みにした。


 「痛・・・!」


 「静かにしろ。佑典に知られてもいいのか」
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