誘惑~初めての男は彼氏の父~
 今日に至るまで幾度となく迷い続け、その都度答えを導き出せぬまま、現在に至っている。


 「全世界を敵に回して、友達も仕事も失い、最後は心中するしかなくなる・・・のも切ないです」


 昔、不倫をモチーフにしたそんな小説を読んだ気がする。


 「だからこれから一年・・・。期間限定で付き合おう」


 肩にかかる髪に触れられながら、キスを受けた。


 「綺麗に離れていけるように、お別れする日を決めて、その日に向けて少しずつ準備をしていこう」


 「はい」


 和仁さんに諭されて、私は返事をしたのだけど。


 いざお別れの日が訪れたら、そんなにたやすく割り切れるものかどうか不安だった。


 心では割り切れても、体が・・・。


 自信がなかった。


 「あと365日? いやもうちょっとあるかな」


 手を引かれた。


 「正確には分かりません・・・」


 再び胸の中に頬を埋めた今でもなお、私は分からない。


 本当にこの選択が最善なのかどうか。
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