誘惑~初めての男は彼氏の父~

離した手

***


 三月の下旬。


 ついに佑典は卒業の日を迎えた。


 我が大学は学部が多い上に、大学院生も含まれているので。


 卒業生は何千人も存在する。


 体育館から卒業生が溢れそうなくらい。


 最近は保護者も数多く駆けつけるけど、和仁さんは来ていない。


 仕事もあったようだし、何より佑典が望みもしなかったようだ。


 朝から式典が執り行われ、午前中には終了。


 卒業生は一旦解散し、夕方に所属学科の研究室に再集結。


 卒業記念の飲み会が開催されるのが常だ。


 私は佑典と同じ学科。


 下級生も参加必須なので、私も顔を出して買い出しなどの準備を手伝う。


 準備が整った頃、卒業生が入場。


 「卒業おめでとうございます!」


 下級生及び教授陣は、あらかじめ手にしていたクラッカーを鳴らして、手洗い歓迎。


 それからは無礼講の宴。


 研究室は本棚などが並んでいて手狭なため、立食形式。


 私は研究室でも佑典と公認の中なので、常に並んで立っていた。
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