誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ちょっと・・・! 返してください」


 取り上げられた携帯電話を奪い返そうと、私は手を伸ばした。


 しかしたやすく手首を掴まれ、引き寄せられ・・・唇を奪われた。


 「これ以上逆らうと・・・撮るよ。こっちは撮影に関してはエキスパートだからね」


 奪った携帯を右手で操作し、左手で私の後頭部を押さえ、脅す。


 携帯のカメラ機能で、今こうして唇を重ねているところを撮影しようというのか。


 そしてそれを、佑典に見せるとでも?


 「・・・」


 私が抵抗をやめたのを確認して、和仁さんは携帯を操作し始めた。


 「何をしてるんですか・・・」


 すると向こうで携帯の着信音が鳴り始めた。


 「君の携帯から、僕の携帯に発信した。これで今後は連絡ができる」


 「え・・・」


 「もうすぐ佑典は戻ってくる。まさか今ここで、佑典に見られるわけにはいかないだろ? 今後のことは後ほど連絡するから。・・・しかし今は便利になったよね。番号さえ分かれば他社携帯にも、ショートメールだって送ることができる」


 一度断ち切った連絡手段が、再び復活してしまった。
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