誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「父さん、クール便だった。××農協から送られてきたスイカ二玉みたい」


 間もなく佑典は荷物を抱えて戻ってきた。


 大きな箱だと思いきや、高級スイカが二玉送られてきたようだ。


 「そうか。ちょっと前に町史編纂の際に写真撮影に協力したお礼だな。佑典、せっかくだから早速カットして、寺本さんにもごちそうしなさい」


 「了解」


 ・・・この時までに私と和仁さんはすでに身を離し、何事もなかったかのように別々の椅子に座り、世間話をしていたかのように偽っていた。


 佑典は慣れた手つきで、まな板と包丁を取り出してスイカをカット。


 撮影などのため出張の多い父親に代わって、家事全般はほぼ一人でまかなっている様子。


 そして綺麗にカットされたスイカが運ばれてきた。


 「××町はスイカの名産地だ。これは高級な品種で、糖分も高い。お薦めだよ」


 息子の彼女をもてなす優しい父親を装い、和仁さんは私に微笑みかける。


 さっきのことなど全て幻のように。
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