誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「い、いただきます・・・」


 恐る恐るフルーツ用スプーンをサクッと刺した。


 スプーンを運び、口に含む・・・美味しい。


 量販店で安く購入した、瓜のように味がないスイカとは大違いだ。


 「寺本さんがちょうど来てくれて助かったよ。親子二人で二玉は、ちょっと多かったからね」


 「こちらこそこんな美味しいもの・・・。ありがとうございます」


 和仁さんにお礼をしたものの、とてもその目を見つめ返す勇気はなかった。


 怖い。


 どこかボロが出たりはしていないだろうか。


 何らかのきっかけで佑典に気づかれ、怪しまれてなどいないだろうか。


 心配でたまらず、せっかくの美味しいスイカも十分に味わうことができなかった。


 「少し前から佑典に彼女ができたとは聞いていたけれど、こうして寺本さんに直接お会いすることできてよかったよ」


 「こ、こちらこそ・・・」


 スイカを食べ終わった後も、そのまま成り行きでリビングで三人座ったまま、世間話を続けることになった。
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