誘惑~初めての男は彼氏の父~
 佑典は自室で私と過ごしたかったみたいだけど、ここから逃れるタイミングを失った。


 「今まで色めいた話のなかった息子だから、初めての彼女がどんな子か気になっていたんだけど、寺本さんのような聡明そうな可愛らしいお嬢さんなら安心して佑典をお任せできる」


 「父さん、余計なこと言うなって」


 自分のことに言及されて、佑典は恥ずかしそうにしている。


 私も対応に困った。


 どういうつもりでこんな台詞・・・。


 「安心してお任せできる」なんて、心にもないことを。


 それは先ほどの、強引に私の携帯電話を取り上げた振る舞いからも想像がつく。


 (もしかして、私と佑典を引き裂くつもり? そして・・・)


 その先のことを考えただけで、怖かった。


 真実を佑典に知られた時のことを考えても・・・。


 「あ、私そろそろ帰らないと。寮の門限が」


 いたたまれなくなって私は、帰宅を申し出た。


 本来ならば今夜はここに、泊まってもいいと考えていたのだけど。


 この状況では絶対無理。
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