誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「しまった。ビール飲んじゃった」


 「あ・・・」


 今夜は私を帰さない、朝まで一緒なつもりなのは佑典も同じだった。


 これじゃ車を運転できない。


 この家から最寄りのJR駅までは徒歩で約40分。


 バスはすでに終発は出ている。


 「僕が車出すよ」


 和仁さんが立ち上がり、棚の上に置かれた車のキーを手にした。


 いくら何でもそれはちょっと・・・。


 車の中で二人きりになるのはまずい。


 「タクシーだととんでもない金額になるし、それが最善だね」


 佑典も賛同してしまった。


 二人きりになるのなら固辞するつもりだったけど、佑典も一緒ならまずおかしな展開にはならないだろうと判断し、お言葉に甘えることにした。


 「・・・ごめんね。バタバタしちゃって」


 和仁さんがガレージに車を取りに行ってる間、ほんの一瞬だけ佑典と二人きりになれた。


 「今回は仕方ないわ」


 佑典のせいじゃないし、私は笑顔で答えた。
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