誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「今度二人で、旅行に行こう」


 背後から肩を抱かれた。


 「もう理恵なしじゃいられないんだ。独り占めしたい」


 「・・・」


 そんなこと言われて、嬉しくないわけはない。


 だけど・・・私に佑典の想いを受け入れる資格があるのだろうか。


 まだ完全に終わったわけではなかった、和仁さんとのことが胸に刺さる。


 「佑典のお父さん、まさか写真家の水無月和仁さんだったなんてびっくり!」


 切なくて耐え切れず、私は話題を逸らしてしまった。


 「それにしても若いお父さんだね。並んで立つと親子になんて見えない。兄弟みたいだったし」


 お世辞なんかじゃなかった。


 さっき二人で並んで立っていたのを目にすると、本当に兄弟のようだった。


 「俺は・・・父さんが23の時に生まれたんだ」


 「最近にしては若いほうだよね」


 「よく、お兄さんですか? って尋ねられるよ。年の差も少ない方だし、親のくせに俺より背が高いときている」


 佑典は178センチで高いほうにもかかわらず、和仁さんはどう見てもさらに高身長。


 スリムな体型を保っているので、年齢よりかなり若く見える。
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