誘惑~初めての男は彼氏の父~
 外車だった。


 車種はよく分からないのだけど、よく目にするマークの付いた外車だ。


 「どうぞ。乗って」


 運転席の窓が開き、和仁さんに車に招かれた。


 佑典が後部座席のドアを開けてくれたのでそこから乗り込むと、佑典も後から続いて乗ってきた。


 「この時間だとJRも本数少ないし、遅くなるから、家まで送ってあげるよ」


 和仁さんは優しく勧めてくれるのだけど、それと引きかえに住んでいる場所がバレてはまずい。


 「でも、ここから札幌までは距離がありますし。JRの駅までで大丈夫です」


 「遠慮しなくていいよ理恵。父さんの言う通り、家まで連れて行ってもらおうよ」


 何も知らない佑典は、私を丸め込もうとする。


 断り切れず、自宅まで送ってもらうこととなった。


 佑典の家から私の寮までは、車でだったらこの時間帯なら30分はかからない。


 「寺本さんって佑典の、大学の一年後輩だったっけ?」


 和仁さんが気を遣う振りをして、私に話しかけてくる。


 さりげなく私の身辺を探っているのは間違いない。
< 46 / 433 >

この作品をシェア

pagetop