誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「バイト行ってたので、暇ではなかったですが」


 「佑典から聞いたよ。家庭教師のバイトしてるんだってね」


 ・・・佑典に、「お父さんにあまり私のこと喋らないで」って言っておけばよかったと思った。


 だけど実際のところ、それは難しい。


 変に思われるし、理由を聞かれても答えられない。


 何もかも報告しあうフレンドリーな父子関係ではなく、一歩距離を置いた関係と聞いていたので、大丈夫だと判断していたのだけど・・・。


 「そういえば理恵ちゃんは、早くにお父さん亡くしてるんだったね。お母さんの負担を減らすために、奨学金を得たりバイトをして頑張るって話してたね」


 「よく覚えてらっしゃいますね」


 「当然さ。好きな子のことなら全て、受け止めてあげたいと願うのは当然の、」


 「ふ、ふざけないでください」


 私は和仁さんの言葉を遮り、そのまま笑い出してしまった。


 「何がおかしいの?」


 急に笑い出した私に対し、和仁さんは理由を尋ねてきた。


 「所詮は遊びだったくせに・・・」


 「遊んだ覚えはないけれど?」
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