誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「いえ、そこまでは」


 それ以前に、そのようなムードに陥りかねない場所で、二人きりで会うだなんて考えられない。


 「過剰評価しないでくれよ。いくら美味しい獲物だとしても、見境なく貪りつくような年頃ではもうない」


 「ですが・・・」


 「僕との話し合いは必要だと思うけど? まさかこんな話、佑典とはできないだろ?」


 その通りなのだ。


 「別に電話でもいいんだけど、あまりこうして電話を続けると、佑典に怪しまれるんじゃないか? 頻繁に君が話し中だと。誰と電話してるんだって」


 「でも直接二人で会うほうが、もっと問題になりますよ。何て弁明するんですか」


 「今週末、佑典はオーケストラ部のコンクールで、数日不在だ」


 親子だから、互いのスケジュールは熟知している。


 確かに佑典は今週末、オーケストラ部のコンクールのため不在だった。


 しかも数日間帰ってこない。


 その隙を狙われた。
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