誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「帰りは月曜になるけど・・・。そんなに長く理恵と離れているのは寂しいな」


 車で来ているためお酒を飲めない佑典は、ウーロン茶の氷をカラカラ音立てながらつぶやいた。


 「たった四日間じゃない。あっという間よ」


 「付き合い始めてから、こんなに離れているのは初めてだからね」


 「そういえばそうね」


 互いの都合で一日とか二日とかなら会えないことがあったけど、四日間というのは史上初。


 「そんなに長い間離れているの、心配だな」


 「どうして? 浮気するとでも?」


 ふざけてそんな台詞を口にした途端、この上ない焦燥感に襲われる。


 明日の和仁さんとの、秘密の約束。


 もしもそれを告白すれば、浮気とみなされるのだろうか。


 心の中に去来する底知れぬ不安をひたすら押し殺し、何気なく振る舞う。


 「まさか、理恵に限って浮気だなんて。・・・信じてるよ」


 佑典は私に対して、絶対的な信頼を置いている。


 心苦しい。
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