誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ごめん。ちょっと詮索しすぎたかな・・・」


 すでに亡くなっているとはいえ、佑典にとっては大切なお母さんの存在を軽々しく扱ってしまったかもしれないと、私は後悔した。


 「違う違う、理恵が予想外のことを聞いてきたから驚いただけだよ。父さんが再婚ね・・・」


 佑典は苦笑し始めた。


 「何がおかしいの?」


 「いや、そんなこと考えたこともなかったからさ。父さんが再婚したいって言い出したら、俺どうしよう」


 佑典は笑いながら、あれこれシミュレーションしているようだ。


 「まだアラフォーだし外見もあの通り若く見えるし、寄って来る女がいても不思議はないかもね」


 その口調からして、死別後和仁さんの周囲に女性の影を、佑典は察知していない様子。


 「これまで恋人・・・彼女さんとかいらっしゃらなかったの?」


 ついに尋ねてしまった。


 「全然聞いたことないよ。母さんの死後、周囲に女の影は感じられたことは一度もなかった」


 「・・・」


 「喪に服してるのか、俺に気を遣っているのかは不明だけど。もしかしたら陰でこっそり遊んでいるのかもしれないけどね」
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