誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「あれっ。この前と車、違いますね」


 先日送ってもらった時は、有名な外車だった。


 今回は国産車の・・・ハイブリッドカーという類?


 「ここに来る前、打ち合わせで市街地内何箇所か回ったからね。そういう時は燃費がよくて、小回りの効く車にしてるんだ」


 そう解説して和仁さんは、助手席のドアを開けてくれた。


 「あの・・・。これからどちらへ向かうんですか?」


 私は思い切り疑りの眼差しを、和仁さんに向けた。


 「特に考えてなかったけど。何かリクエストある?」


 「いえ、ただ・・・」


 「もしかして、まだ僕のこと疑ってる?」


 「・・・」


 うかつに助手席に乗ってしまうと、ただでは済まないような予感がしていた。


 「そんなに信用されてないとはショックだな。約束したのに。絶対こっちからおかしな真似はしないって」


 街灯の薄明かりの中に浮かぶのは、和仁さんの翳りのないまなざし。


 「本当に・・・何もしませんか?」


 「だって、嫌がる相手を無理やり・・・なんてしても、楽しくないよね?」
< 82 / 433 >

この作品をシェア

pagetop