誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・了解しました。約束ですよ?」


 ずるい男なら、口約束なんて平気で反故にするかもしれない。


 だけどここまで約束を重ねて、平気で違えるような人には思えなかった。


 恐る恐る私は、助手席に乗り込んでシートベルトを締めた。


 「・・・で、どこか行きたい場所ってある?」


 エンジンをかける前、和仁さんは尋ねてきた。


 私はあれこれ考えたけど、結論が出なかった。


 ファミレスは他にもいろいろあるけれど、またさっきのように恥をかくかもしれないので避けたい。


 あまり騒がしい場所も困る。


 逆に過度にムードあるバーなども危険だ。


 無難なのは・・・近くの公園で立ち話とか?


 それも近所だと、犬の散歩中などの知り合いに目撃される可能性が。


 どうしたものか。


 「・・・なかなか結論が出ないね。それなら涙が乾くまでドライブしない?」


 「えっ、ドライブ?」


 私はぎょっとした。


 「ドライブしながらだったら、他人の目を気にしないで、あれこれ話し合えるじゃない?」


 提案に同意した。


 好ましからざる場所などに、絶対に連れ込まないと約束した上で。
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