誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・!」


 私は恥ずかしくなって、不意に顔を横に逸らしてしまった。


 窓の外を見ると、車はちょうど高速道路の下をくぐったところだった。


 札幌市内北部へと移動していく。


 どこへ向かっているのやら。


 「・・・今すぐに結論、なんてやっぱり難しいよね」


 急に和仁さんは、妥協案のようなものを示してきた。


 「こうなってしまった以上、佑典と付き合い続けても、常に周囲に僕の気配を感じ続けなければならない。それは君にとって、かなり重圧になると思う」


 「はい。知らん振りして佑典のそばにいられるほど、私は強くありません・・・」


 「君が望むならば僕が・・・君の前から一生姿を消しても構わないけど」


 「だっ、だめです。そんなの」


 私は運転中の和仁さんを見つめながら反論した。


 「なぜ? そのほうが君が楽になれるかもしれないのに?」


 それは困る。


 なぜならば・・・。


 「今までの日常が壊れるのを、私は望みません・・・」


 言葉を選びながら私は答えた。
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