誘惑~初めての男は彼氏の父~
 しばらく海を眺めていたけれど、退屈になってきたので、携帯電話であれこれ暇つぶしを始めた。


 GPSで現在位置を確認したり、ニュースサイトをチェックしたり。


 佑典の声を聞きたくなり、電話してみようかとも思い立った。


 だけどいつ和仁さんが戻ってくるか分からないし、向こうから連絡がないということはまだ忙しいのだろうと判断。


 あきらめて和仁さんが戻ってくるのを、静かに待っていることにした。


 何となく車から降りてみた。


 全身が海風にさらされる。


 依然として気温が高めで、動くだけで汗ばむくらい。


 でも海からの風は爽やかで、蒸し暑さを吹き飛ばしてくれるよう。


 そして心地よい海風を感じながら、一人夜の海を眺めてみた。


 天頂近くまで昇った月に照らされて、ミステリアスな情景を作り出している。


 美しい、だけどその分だけ何か恐ろしい。


 月光の金色の世界と、夜の海の暗い色とがあまりに対照的で・・・怖いくらいに綺麗で。
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