小野部長
「僕はね、毎日お風呂に入った時にこのエクササイズをやっているんだけど、この間、たまたま洗い場でエクササイズをやっていた時に息子が扉をあけちゃってねぇ。びっくりしたよ。『パパ、何やってるの?』って聞かれちゃってさぁ。」

ははは、と照れたように笑う部長。

風呂に入った時、という事は、部長は素っ裸だったのだろう。

‥息子さんの心に傷を残してはいないだろうか。

まだ会ったとのない、つい最近5歳になった小野部長の息子の心配を思わずしてしまう高峰であった。

それにしても、と高峰は口をはさんだ。

「部長の家の風呂、エクササイズができるぐらい広いんすね。」

「え?そこ?高峰君、そこなの?」

せっかくアドバイスをしているんだから、とふてくされる小野 隆、48歳。

口をとがらせて可愛い歳は、もう40年ほど過ぎている。

「このエクササイズ、本当に効くんだよ。この間、田中さん達に何か運動やっているのか聞かれて、廊下でみんなでやったんだけどね、彼女たち、翌日筋肉痛になったらしいからね。」

「は?廊下?会社のですか?」

「うん。そうだよ。」

微妙な顔で上司を見つめる高峰。

「あ、あとね、靴も大事だよ。あのさ、ほら、バランスボールみたいな――」

――何でこの人が俺の上司なんだろう。

そっと溜息を吐く高峰であった。




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