小野部長
掃除機
ようやく繁忙期を過ぎた月曜日。

高峰は部長の席をチラ、と見やり、どうしたものかと考える。

今高峰が抱えている案件で部長に相談したいことがあったのだが、今日は朝から部長の様子がおかしいのだ。

いつもはにこにこと無駄に元気に挨拶をしながらオフィスに入ってくるのに、今朝は傍から見て分かり過ぎるほど落ち込み、虚ろな瞳でやって来たのだ。

周りの人間も部長の様子がおかしいことに気付いているようだが、普段とあまりにも様子が違い過ぎ、声を掛けることをためらっているようだ。

できれば自分も係り合いたくはない高峰であったが、この問題が解決しないことには前に進めない。

よし、と自分に気合を入れ、部長の席に向かった。

「部長、よろしいですか?」

「‥‥」

「部長?どうしました?」

「~~っ!高峰君!」

うるうるの瞳で高峰を見上げてくる部長。

もうすぐ50のおっさんにそんな目で見られてもちっとも嬉しくない高峰は、その様子に気が付かないふりをして仕事の話をしようとした。

が、遅かった。

「離婚だよ!」

「は?」

「離婚の危機だよ!」

オフィスがしん、と静まり返った。
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