カノンの流れる喫茶店
♪
天井近くにつけられた黒いスピーカーから流れてくるのは、カノンだ。
厳かで、なのに眠気を誘う間延びしたメロディは、このカフェを経営するマスターと、その彼女さんのお気に入りらしい。
ゆったりした曲に似合う、深みのあるコーヒーを出してくれるカフェの名前は、『Gulen』だ。
赤茶けた椅子、テーブル、床、磨かれたそれらに反射するオレンジ色の照明――
私のお気に入りの店だ。
私行きつけのコーヒーに、私の彼氏はミルクを入れてしまう。
スプーンでくるくると渦を描き、その縁から細くミルク垂らして。
中心へ向かってとぐろを巻く白を見つめながら彼が口にしたのは、別れ話だった。
どこか落ち着ける場所で話をしたい……そんなことを言うからここを選んだのに、まさかそんな話とは……。
厳かで、なのに眠気を誘う間延びしたメロディは、このカフェを経営するマスターと、その彼女さんのお気に入りらしい。
ゆったりした曲に似合う、深みのあるコーヒーを出してくれるカフェの名前は、『Gulen』だ。
赤茶けた椅子、テーブル、床、磨かれたそれらに反射するオレンジ色の照明――
私のお気に入りの店だ。
私行きつけのコーヒーに、私の彼氏はミルクを入れてしまう。
スプーンでくるくると渦を描き、その縁から細くミルク垂らして。
中心へ向かってとぐろを巻く白を見つめながら彼が口にしたのは、別れ話だった。
どこか落ち着ける場所で話をしたい……そんなことを言うからここを選んだのに、まさかそんな話とは……。