カノンの流れる喫茶店
彼は言っていた……嫌いになったわけじゃないって……

そんなこと言って、別れを和らげてほしくなかった。

でも、ほんとに私のこと、嫌いになったわけじゃないのなら……

だったら……だったら、きらきら星からカノンへと曲が戻ったように、私達も戻れないだろうか……?

私は、無言のまま、彼のお釣りと忘れ物を手に、店から出た。

そしてつい立ち止まった店先、窓のところに、クロネコの人形を見る。

その左手が、なぜか、持ち上がっていた。

まるでどこかを指差しているようで……その方向は――

昔、通い慣れた、白い校舎へ続く道――





私は、レンガ敷きの通りを走り始めた。

あの教室、あのカーテンの中を目指して。

彼に、一万円、返してやるんだ。

これから先、何度、彼に先払いされたって。
< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

たぶんきっとおそらくだけど彼は来ない
紅 憐/著

総文字数/1,477

恋愛(その他)2ページ

表紙を見る
-Gulen-
紅 憐/著

総文字数/8,046

絵本・童話25ページ

表紙を見る
今宵、桜と月の下で
紅 憐/著

総文字数/3,047

恋愛(その他)8ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop