私の彼氏はおデブさん
近くで慌てた玉川君の声が降ってくるようになると、少しだけ状況が把握出来たけど。





「ミヤビちゃんっ! 橘には何もしないって言ったから、俺橘の事教えたんだよ! 早く橘から降りて!」






(もしかして玉川君の好きな人が私だから、ミヤビちゃんは私を敵対してるの……?)




ここまでして、玉川君の事が好きなの……?






「ヘブンズドアー!!」


「ミヤビちゃんっ! 橘を天国に逝かせないで! 天国のドアを開かせないで!」






今度は後ろから両腕を引っ張られ海老反りさせられると、私は静かに目を閉じた……。




早く解放されるよう神様に祈りを捧げながら。






(神様……どうか今すぐ私をお救いください……)





二人はその間もごちゃごちゃ何か騒いでいるけど。






「玉ちゃん、この顔が良いの!? それとも体!? もう寝たの!?」


「ばっ……! バカ! 何言ってんの! そんな事は良いから早く橘を放しなさい!」


「そんな事って、一番大事な事でしょ!? 寝たか寝てないか、答えてくんないと今度はジャイアントスイングするよ!? 遠くまで飛ばすよ!?」


「ええっ!? 絶対ダメだから!! 橘をジャイアントスイングするなんて……!!」


「じゃあ寝たの!? 寝てないの!? どっち!?」


「だ、だから……それは!!」






焦っているのか玉川君はたじたじ。



玉川君をこうも困らせる女の子も凄い。






「玉ちゃん、照れてんの?」


「て、照れてねーよ! ……ってああ! 橘っ!!」






二人の話が長くて海老反りに疲れ、私が首をうな垂れさせると、玉川君の叫んだ声が顔の近くで聞こえてきた。
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