野球してる君が大好きです。
私たちは外に出てから
私が行きたかったところまで
歩いて行く。


「私ね、水族館とか初めてなの」
「そうでございましたか‼︎私は…何年ぶりでしょうか…」

いつか忘れてしまい、
照れながら苦笑する
結城の顔を見てると
少し気恥ずかしい。

少し人通りも多くなってきた。
そして、もっともっと多くなる。

「ねぇ、結城…」
私が前を向くと、誰もいなかった。


(も、もしかして…)
「わたし、迷子になっちゃったの⁈」

電話をしようと思ったが、
結城に預かってもらっていることを
思い出す。


私は一人で結城を探す。


すると……


「あれ…?君、ひとり?」
聞いたことのない声。
とても怪しい声……。

「つ、ツレがいるんですよ……っ」
私は怯えながらもしっかり伝える。

「いーじゃん、あそぼーよ」
そう言って男は私の腕を
引っ張って抱きしめてきた。

「や、離して‼︎や、やめてってば……!」

私はその男の手をふりはらう。

「へぇ…、楽しませてくれんじゃん」

そう言った男はまた私の腕を掴み、
顔を近づけてくる。

「な、なんで…す、か……⁇」
「何って…あそぼって
言ってるだけだから」

私はその男から離れようとしたが
全然離れてくれない。

「離して…‼︎」

(お願い……助けて!陽斗‼︎)

その時、私の腕から男の手が離れ、
そのかわりに、誰かが掴んでいた。


「気安く触ってんじゃねーよ」

今までに聞いたことのない声。
それでも、私の救世主は
相変わらず変わらない性格だ。

まっすぐで誠実で不器用で優しくて……
私はどんどん惚れていくばかり。


結城は…いつも、そうだ。
私を惚れさせてばかり。

「誰だよ、おめー」
「こいつのツレだよ」
「ふーん。こんなブス女捕まえる俺がアホだった」

そう言って男はどこへ行ってしまった。


「お嬢様‼︎大丈夫でございますか⁇」
「結城…こ、怖かったよぉぉ…」

私は安心して
思わず、結城に抱きついた。

『傍にいると安心する』
結城が私に向けて言ってくれた
この言葉は私も同様だった。

結城が傍にいると落ち着く。









子供みたいな発想かもしれない。
それでも、私は結城のことが好きだ。





お子様みたいな恋愛でも
大人な恋愛でも
恋愛の形なんて人それぞれ。

私は私なりに恋愛の形を見つけて
恋愛したい。


きちんと伝えるために。



________________________________
不審な男にあってから
私たちははぐれないように、
近づいて歩いた。


それでも、私は不安だった。

(…またはぐれちゃったら…)

私は結城の服の裾を掴む。
それだけで落ち着く。


「お嬢様…」
そう呼ばれただけなのに
胸がキュンとなった。

「な、なに…」
私はうつむいたまま
聞き返す。

顔を上げたらばれてしまうから…。

「先ほどはすみませんでした…」
「い、いいの…私がはぐれただけだし」
「私が守ると言ったのに…」


また胸が高鳴る。

「い、いいの。ありがとう」
私は恥ずかしすぎて少し声が震えた。



「えと…お、お嬢様は…とても綺麗でございますよ…//////」

私はまたドキッと胸が高鳴った。
それと同時に結城が顔をうつむかせた。

真っ赤だ。
熱でもあるのか…。



私はそう心配したが、
さっき言われたこともあって
なんて言えばいいのかわからなかった。


_____そんなこんなで。
また人通りが多くなった。

私は結城の服の裾をつかんでいたが、
それだけじゃまたはぐれちゃいそうで。


(ぎゅっ
結城が私の手を握ってくれた。


一つ一つの行動に胸が高鳴るのは、
いつからだっただろうか。



いつの間にか、
想いは大きくなっていた。



結城を1人の男の子として見ていた。





それくらい好きだった。





そんな事実を通り越したら
どんな言葉がその先に待ってるのかな…





その答えが見つかったら…
きちんと伝えよう…。





それまでにはかなり時間が必要だ。










「待っててね、結城。ちゃんと伝えるまで。私、がんばるから…///」




私は結城の手を
ぎゅっと握り返して、
ボソッと照れながら呟いた。








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