野球してる君が大好きです。
8:20私たちは駅に着いた。
駅までは何も喋れなかった。


先輩たちはすでに来ていた。


いろいろ茶化されたけど、
結城の心が読めない私には
結城の気持ちが何もわからなかった。


8:35発の電車に乗り
別荘がある咲本市まで乗る。
およそ35分後。
咲本駅に到着。


「着いたぁ‼︎」
胡桃がはしゃいでいる。

「胡桃、はしゃぎすぎ!」
遥香先輩が注意する。

一方、男子たちは…

「あれ…、いない⁉︎」

みんないなかった。

「探しに行くよ‼︎」
遥香先輩にそう言われ、
3人で手分けして探しに行った。


全然見つからないまま
時間が経つ。

ホームには誰もいない。

遥香先輩も胡桃も
先に行ったのかもしれない。


「はぁ…」

私がため息をついた時。

「お嬢様?」

後ろから声がかかる。

振り向くと、結城がいた。


「結城‼︎みんなは…?」
「私もはぐれてしまって。降車する時に人混みに紛れちゃって…」
「そう…。はやく、中に入ろうよ。暑い…」

私はそう言って苦笑した。

「そうですね…。足は大丈夫ですか?」
「まだ、ちょっと痛むけど…大丈夫よ」

そう言った時
結城は私を抱えた。

「わ…、ゆ、結城」
「おろしなさいとか言わないでくださいね」

そう言いながら階段を上って行く。

「ねぇ、結城…」
「はい?」
「昨日言ったこと…覚えてる?」
「もちろん」
「もしそれが、結城に向けてだったら…どんな気持ちだった?」


気になることを聞いてみた。


「嬉しすぎて倒れます。多分」
「倒れちゃダメよ」
「倒れませんよ。でも、嬉しすぎますよ。それが執事としてなら」


結城の声は最後の方で少し震えた。


執事としてなら…。

「そんなこと言わないでよ…」
「え…?」
「……執事としてじゃなくて…、一人の男の人って見てたらどうなのよ…」
「そうですね……、好きな人がいるので…。付き合うことはできないですね」



彼から出た好きな人という言葉。
私にとってはすごく悲しい言葉だった。


(別れたのに、私ったらしつこいんだから…。だから……)


「そ、そう…」
「でも、なんでですか?」
「え、ほら!結城のこと好きな子がいるから‼︎」
「そうでございますか」


話しているうちに外に出ていた。

みんなが待っていたし、
茶化されたくないと思ったのか
彼は私を、おろした。


「私はお嬢様の幸せを願っております」


一番言われたくない人にそう言われた。














ばかっ………

「早く気づいて‼︎
まだ好きなのよ‼︎」

彼の後ろで言った言葉は
彼に届いていて欲しい。




小さな声の大きな想いだから___
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