野球してる君が大好きです。
「楽しそう…」


私がそう呟くと…

「俺たちと遊ばない⁇」
そう、後ろから声をかけられた。


全く知らない人。


「ぇ、いや…」

グイッと腕を引っ張られた。

「遊ぼって言ってんじゃん」

怖くてなにもできないまま
ある場所に連れて行かれた。


「痛いです‼︎離してください‼︎」
「やだね…」
「痛いです‼︎」
「へぇ〜。結構かわいいじゃん。さすが有栖中出身の女子はかわいいねぇ…」


体格は大体高校生くらい。
たぶん、隣町の人たちだろう。


私は腕を思いっきり振り払った。


「あそぼーよ。寂しいでしょ?」


図星だ。でも、そんなこと思わせない。

「寂しくなんか‼︎」
「嘘だ。あんなに結城を見てたのに?」




なんで名前を…



不思議に思った。
知ってるはずがないのに。
なんで。


「あ、俺らは中学時代まで結城と同じ中学にいたんだよ。だから、結城のことはよく知ってる」
「そうなんですか…。でも、結城は関係無い」

関係ある。
でも…、もう、結城にとっては
私なんて関係ない存在。


「じゃあ、楽しもーよ。俺らと」
「いやです‼︎」


私はその場から逃げた。
でも、足を痛めているため
なかなか早く走れず
腕を掴まれてしまった。


「足、怪我してんじゃないの?」
「してないですよ‼︎」
「ふーん…」


私は腕をグイッとひかれて
彼の腕の中に入ってしまった。


「なにするんですか‼︎」
「結城がいる。お前を探してんだろうな…。多分」


嬉しい…。
けど。


「吉田⁉︎」
「久しぶりだな」


結城の声が聞こえる。


「結城っ!」
私は彼の腕の中で口を抑えられてしまった。


なんだろ…。
なんか…目の前がくらい…。


「まさか…」
「どうしたんだよ」
「帆乃香を離せよ」
「よくわかったな」
「あたりめーだよ‼︎はやく離せ‼︎」
「なんでおめーに言われなきゃいけねーんだよ」


結城は…
私のこと嫌いだよね…。
でも、なんで助けに来てくれてるの…。


「早く離せよ‼︎」
「なんだよ、もう関係ねーんだろ」
「あるよ。帆乃香は俺の…」

そこで彼の言葉は止まった。

結城にとって…?




私はなに…




どんな存在?




「あー、もう、おせーよ、ばーか」
「……っ‼︎」
「仕方ねーから離してやるよ」


そう言って私を突き放す。


「お嬢様‼︎」
「なるほど。まー、こいつはまた今度にするわ。じゃーな」

彼らは笑いながらどこかに行った。


私は声が聞こえたりするけど
話したり目を開けたりできなかった。

そして、そのまま
声もだんだん聞こえなくなった。




ねぇ、結城。

あの時。あなたは何を言おうとしたの?
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