野球してる君が大好きです。
誰もいないはずなのに。


「ばかなのはお嬢様もですよ」
いつの間にか結城は
私に追いついていた。


「足が痛いくせに、なぜ我慢をするのですか?」
そう言って私は結城に抱えられた。


「おろ…」
「おろしませんから」


私が全て言い終わる前に
結城が先にその言葉を伏せた。


「…うん…」

少しの幸せとたくさんの不安で
私の心と頭の中は
ぐちゃぐちゃになっていた。


結城といることがこんなにも嬉しいことだと気づくのはいつぶりだろうか。




「いつでも頼ってほしいです」
「うん…」

別荘に着いた。


結城は私をゆっくり下ろしてくれた。


「歩けますか?」
「大丈夫よ」
「それならよかった」

彼はそう言って2階に上がって行く。


またいつもとは違う頼れる背中が見えた


私はキッチンに行って
夕食を作る。
今日は肉じゃがだ。


「んー!なんかいい匂いする!」
「遥香先輩…」
「どう?結城くんとは」
「……どうもなってませんよ」


私は苦笑しているけど、
苦しい、辛い、悲しい。


「そか…、なんなら隆弘と付き合えばいいのに」
「でも…一回振ってるんです…」
「ぇ、告られてたの⁈」
「はい…」


遥香先輩は少しだけ考え事をしている。


待っている間に肉じゃがが完成した。



「あの…みんなを呼んできてもらってもいいですか…?」
「もちろん‼︎」


遥香先輩は快くOKしてくれた。


私はさらに盛り付けて
みんなが来るのを待つ。

私が食べるのは
みんなが食べ終わってからだから。


「うわ、いい匂い‼︎」
「たくさん食べてくださいね、おかわりしたかったら、お鍋の中にまだいっぱい入ってるので…」
「おう‼︎じゃあ、いただきまーす‼︎」

みんなが食べ始める。

私は天文台に向かった。

みんなに知られたくない
私だけの秘密基地。


今日は星が綺麗だ。



「……落ち着く…」

辺りは静かだけど
波の音と海風の匂い
輝く星が辺りを照らす。



私はその風が気持ち良くて
いつの間にか天文台のところにある
ソファーベッドで寝てしまっていた。

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