キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 



こっち、と手を引かれるまま、いつもの診察室に私は連れてこられた。

今はちょうど診察時間終了の16時を回ったらしく、待合室にはもう患者さんの姿はなかった。

診察室に入った時、見慣れた、でもすごく懐かしい、その後ろ姿が目に入った。


「……コタロウ!」


私の呼びかけにその後ろ姿はぴくっと動き、振り向いた。

そして、床にトンッと降り、私に向かって真っ直ぐと歩いてくる。

目の前まで来ると、みゃおと鳴いた。


「もう……!コタ~本当に良かった!」


コタロウを抱き上げぎゅうっと抱きしめると、コタロウは私の頬に顔を近付け、ふんふんと匂いを嗅ぐ。

そのいつもの行動で、本当にコタロウが腕の中に戻ってきたんだと実感が沸いてくる。

コタロウのぬくもりを思う存分感じていると、上から虎谷先生の声が聞こえてきた。


「坂本さん、良かったな。ほんとに」

「はい……っ!先生、ありがとうございます!」


私は上を見上げ、笑顔を浮かべてくれている先生にぺこぺこと頭を下げる。


「俺よりも、堺さんにお礼を言った方がいい」

「堺さん、ですか?」

「あ、コタロウを見つけてくれたのは堺さんって方なんだよ。今たぶん堤先生に堺さんのところのペットを見てもらってるはずだから、待合室ででも待ってたら会えると思うよ」

「待ちます!お礼、言わなきゃ……っ」

「うん。それがいい」

 
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